従来の SE は、ざっくり言えば「良いソフトウェアを作る/使う」ためである、と捉えることができます。一方、SE4BS は「良いビジネスや良い社会の実現に貢献するソフトウェアを作る/使う」ための活動であると捉えてください。どんなに良いソフトウェアを作り使ったとしても、それはビジネスや社会に役立ってはじめて意味がある、と考えており、その思いから "4BS" (for Business and Society) と名づけました。
SE4BS には、従来の SE を包含・拡充・補完する意図は無く、SE との関係性も当面は考慮しません。「ソフトウェアにエンジニアリングを適用する」という理念に敬意を表して SE という言葉を使いつつ、SE4BS は「良いビジネスや良い社会の実現に貢献する」という点を追究していきます。
当然、従来の SE と重なる部分が出てくると思いますが、その場合にその部分を除外したり、従来の SE とすり合わたりすることは考えていません。将来的に、SE4BS がソフトウェア業界に浸透し、SE4BS が SE の一部として認知されれば、わざわざ "4BS" と表記せずとも SE の中に 4BS のコンセプトが入ったことになります。それこそが SE4BS の究極の目的と言えるかもしれません。
SE4BS に共感し、SE4BS を意識して活動すれば、それが SE4BS の適用や実践であると考えます。
BA は「ビジネス」をベースにしており、ソフトウェアや IT は様々な実現手段の1つとして位置付けられ、その実現方法に関しては概論が示されるにとどまっています。
SE4BS は「ソフトウェア」をベースにしつつも、ソフトウェアがビジネスを実現するために不可欠な要素であることから、「ビジネス」の企画・デザイン・開発もスコープに含んでいます。また、ビジネスの要求をソフトウェアや IT にどう落とし込むかは SE4BS の重要な論点の1つです。
SE4BS と BA は「ビジネスを改革し成功させる」という目的では共通しているので、オーバーラップする内容がかなりあります。今後ビジネスとソフトウェアの密接度がますます上がっていくので、そのオーバーラップの度合いも増していくでしょう。とはいえ、「ソフトウェア」がベースか「ビジネス」がベースかという成り立ちの違いがありますので、両方とも不可欠な知識・活動であると思います。
方法論や設計技法の開発者が SE4BS に則っていると主張し、利用者がその主張を正しいと認めれば、その方法論や設計技法は SE4BS に則っていると考えてよいと思います。SE4BS の認証制度のようなものを整備する予定は今のところありません。利用者の多くが SE4BS に則っていると判断すれば、やがてそういう方法論や設計技法であるという評価が定着するでしょう。
SE4BSは従来のSEの拡張の位置づけになります。従来のソフトウェア・エンジニアリングでの設計はアーキテクチャドリブン開発と読び、SE4BSはその前段となる価値ドリブン開発を新たに定義しています。
業務フローや状態遷移図を使うプロセスは従来のソフトウェアエンジニアリングの範囲ですのでSE4BSでも必要になる設計手法です。
SE4BSで大事にしているのはそれら業務フローや状態遷移図で示したことがいかにステークホルダーのうれしい、自分たちのやりたいに紐付いているかを明確にするところです。
工学的な知見を入れて、ソフトウェアを品質よく、保守拡張性高いものに作り上げるというのが、従来のSEだったと思います。その目標も大事ですが、「世の中に役立つソフトウェア」作りの重要性が増してきました。従来のSEに基づいてソフト開発をすることに加え、価値を創造することが今、ソフトウェア開発者に一番求められているのです。価値を創造する方が世の中の役に立つし、面白い、というムーブメントを起こそうと、SE4BSのメンバーが立ち上がりました。せっかく今の日本のソフト開発者は、超優秀で何でもできるので、ビジネス価値やお客様価値の追求や勉強と実践にもう少しエネルギーを注げば、開発者の価値も上がり、「お客様の幸福=開発者の幸福」につながるものと考えています。
アジャイルはSE4BSの価値創造プロセスを実践する方法の一つになりえますので、包含関係にあります。SE4BSが特に大事にしているのはアジャイルという機敏なプロセスを回した価値を高めるということだけでなく、価値創造のための活動を知情意で捉え、相互に行き来することで高いお客様価値を捉え・産み出すことです。