2. SE4BS宣言

2.1 存在理由と3つの原則

SE4BS 宣言

我々は、現代社会におけるソフトウェアの意義を理解し、それに関わるすべての人々の努力で、その力を正しく世界に開放するためには、以下の原則が必要だと確信します。

SE4BSの存在理由:

自分たちのビジョンにもとづいて、チームとソフトウェアの力を効果的に嚙み合わせて、組織や市場や社会を変えていく活動の基本作法を実践的な具体例とともに提示し、誰もが希望ある未来を作り出す活動に参加できる社会づくりに貢献します。

原則1)SE4BSの取り組み原則:

ひとりひとりパーソンセンタードな取り組みを大切にし、他人事でなく自分事として各ユーザー・各ステークホルダーにとっての価値を「知・情・意」と「真・善・美」の観点でつねに考えます。

原則2)SE4BSのエンジニアリング原則:

既存のサイエンス及びエンジニアリングの成果を最大限活用し、ユーザーやステークホルダーを最大限尊重し、価値のある課題・意味のある問題に、妥当な人と時間と方法で積極的かつ効果的に取り組んでいきます。

原則3)SE4BSのアジャイル活動原則:

現場・現物・現実・当事者と実際に話し合い、目的を見直し共有し、現物を一緒に作り・使い・直し続ける、というアジャイルな作法で活動していきます。

2.2 SE4BS宣言の説明

ソフトウェアの力が社会を大きく動かすようになってきている現在、ソフトウェアの意義と力、社会と個人個人、それらの適正な関係の構築を目指して、我々ソフトウェアエンジニアの活動を位置づけなおす必要があると考えています。ここではSE4BSの、寄って立つ原則の位置づけを明確にして、各原則の意味を説明します。

SE4BSの存在理由:

自分たちのビジョンにもとづいて、チームとソフトウェアの力を効果的に嚙み合わせて、組織や市場や社会を変えていく活動の基本作法を実践的な具体例とともに提示し、誰もが希望ある未来を作り出す活動に参加できる社会づくりに貢献します。

  • 私たちはソフトウェアの力とともに、チームの力、内外の多様なチームどうしのコラボレーションの力を信頼します。
  • 希望ある未来を作り出すためのやり方の大もとになる基本作法をまとめて、みんなが自由に使えるようにします。
  • 基本作法をもとにして、チームや組織の内外で個人個人が個性と創造性を発揮し、顧客にも社会にも価値が提供できる、というお手本を示していきます。

原則1)SE4BSの取組み原則:

ひとりひとりパーソンセンタードな取り組みを大切にし、他人事でなく自分事として各ユーザー・各ステークホルダーにとっての価値を「知・情・意」と「真・善・美」の観点でつねに考えます。

  • 顧客もユーザーもエンジニアもすべての関係者は、ひとりひとり感情を持ち、思いや希望を持ち、家族や仲間と一緒に、いろいろな環境の下で生活している、ひとりの人類(ヒューマン)である前に、人格をもった個別の存在(パーソン)なのだということを常に忘れません。
  • ひとりひとりが苦痛を感じたり気持ちを押し殺したりすることなく、他の人々と助け合い成長し合いながら、各自の夢に向かって生き生きと暮らしていける社会をつくるためのお手伝いをするのが、ソフトウェアやエンジニアの存在理由なのだと考えます。
  • エンジニアひとりひとりも、苦痛を感じたり気持ちを押し殺したりすることなく、いきいきと自然体で日々の仕事に取り組み、自分の夢に取り組んでいけることが不可欠です。
  • ひとりひとりパーソンとしての個人は、情(直観、フィーリング、相手への思いやり)を大切にしながら、チームの中で知(知識、スキル、知恵)を出し合って、意(意志、ビジョン、貢献)をみんなで共有しながら、自然体で生き生きと活動していくことが、これからの仕事やチーム活動の基本になるべきだと考えます。
  • 顧客もチームや組織のメンバーも多様な価値観をもっている中で、個人・チーム・市場・社会・人類の各レベルで、なにが「真(状況や問題に対する正確でバランスのとれた理解)」なのか、なにがみんなにとって「善(問題が少し減り、状況が少しよくなり、みんなが少し幸せになる)」なのか、なにが個人や社会や環境にとって「美(バランスよい全体性、みんながここちよく感じる、自然や環境と人間の関係性)」なのか、について絶対的な正解がないなかで、常に考え続けます。

原則2)SE4BSのエンジニアリング原則:

既存のサイエンス及びエンジニアリングの成果を最大限活用し、ユーザーやステークホルダーを最大限尊重し、価値のある課題・意味のある問題に、妥当な人と時間と方法で積極的かつ効果的に取り組んでいきます。

  • 顧客やユーザーが抱えている悩みや課題を、自覚されていないことも含めて当事者に寄り添ってチームの自分事として知・情・意を総合的に用いて把握することで、当事者にとって意味のある課題・問題を発見する努力をします。
  • 改善・解決するための最適な技術・手段・方法を、常に顧客やユーザー目線とシステムやサービスの全体性とを視野に入れながら、真・善・美を常に意識しながら、デザインと検証・見直しをアジャイルに進めていきます。
  • 技術、手段や方法、それを組み合わせて計画・実施していくプロセスとチームのあり方、こうしたことを知・情・意の観点で常に実践的に学び続けて、チームの知識とスキルの見直しを怠らず、学習する組織として進化させていきます。
  • 過去のよいプラクティスは積極的に取り込み、自分たちの状況下で実践して検証し、自分たちの新たに得た知見はオープンに公開し、エンジニアのコミュニティが互助組織として持続発展することに貢献します。

原則3)SE4BSのアジャイル活動原則:

現場・現物・現実・当事者と実際に話し合い、目的を見直し共有し、現物を一緒に作り・使い・直し続ける、というアジャイルな作法で活動していきます。

  • ウォーターフォールかアジャイルかという開発プロセスの問題ではありません。どんな開発のやり方であろうとも、顧客やユーザーとの接し方・顧客を含むステークホルダーの価値の重視・チームワーク・現地や現物の重視・定期的な振り返り・人間的なプロセスのあり方をとるべきこと、という点ではアジャイルなマインドセットですべての仕事や活動に取り組むべきであると考えています。
  • ユーザーや社会の当事者に価値を届けるためには、ビジョンを設定し共有したチームで、ユーザーや関係当事者の声や置かれた環境の理解を真摯に行い、仮説を立ててデザインを行い、それにもとづく現物を作って提供し、その妥当性検証をユーザーや当事者を巻き込んで行い、そのフィードバックを受けて仮説やデザイン(そしてときどきビジョンそのもの)の見直しを行い続けること以外に、妥当なアプローチは存在しないと考えています。
  • プロダクトやサービスの規模や性格、対象となる組織や地域の特性や経緯によって、「アジャイル」さやプロジェクトの進め方は変わってこざるを得ませんが、検証サイクルを繰り返しまわしながら、顧客や当事者と一緒に課題を見直し、再確認し、サービスや解決策を少しづつ育てていくことに違いはありません。